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   5.EC04のキャブレター・セッティングについて

-CONTENTS-

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1.目的と原則について

2.2ストローク小排気量エンジンの仕組み

3.レギュレーションに則ったEC04のエイジング加工による性能向上について

4.EC04エンジンのリードバルブと混合気の吹き返しよる限界について

5.EC04のキャブレター・セッティングについて

6.EC04系エンジンのCDIと点火の調整について

7.EC04系エンジンのこれまでの形式と部品、構造の違い

8.オイル添加剤等とエンジンオイルについて

 EC04系エンジンのキャブレターは販売当初より全く変更が無く供給されていますので、ここでは、そのセッティングについて解説します。また、レギュレーションによっては、エンジン性能の統一のために、キャブレターのセッティングに制限がある場合もありますので、必ずご確認ください。

 EC04系エンジンのキャブレターの構造はいわゆるスライド式といわれるもので、ジェットニードルがついたピストンをアクセルワイヤーで引っ張り、それを上下させて空気の流入量と燃料の霧化を調整します。キャブレターのフロート室には、メインジェットと呼ばれる、小さな穴のあいたネジがあり、この穴の径で、混合気のガソリンと空気の割合を調節します。EC04系エンジンのキャブレターで調整できるのは、このメインジェットを純正オプションとして供給されている62.5番から80番までのものに交換して混合気を薄くしたり濃くしたりすることと、ジェットニードルについている5段階に調整できるクリップ位置を変更すること、キャブレター側面にあるアジャストスクリューで、ピストンの一番低くなる位置を変更してアイドリングの調整こと、あとはフロート室の油面調整だけです。もちろんこれらは、すべて純正品と純正オプション部品のみ使用可能で、切削加工は一切禁止です。まあ、理論的に切削加工して性能向上する部分は全くありませんけれども。
 以下、それぞれのセッティングの方法について解説します。


5-1.メインジェット

 メインジェットは、新品には70番がついてきますが、オプションで62.5番、65番、67.5番、75番、80番が供給されています。この番手の値が小さいほど、メインジェットの穴が小さくなって燃料を吸い出す量が減り、混合気に含まれる燃料の量が少なくなって、いわゆる薄くするということになります。逆にメインジェットの穴が大きいほど混合気に含まれる燃料の量が濃くなります。
 エンジン内部でのガソリンの爆発には、理想空燃比という概念があり、最もパワーが出るとされる値があります。しかし実際には、理想空燃比では、低中回転時のトルクが不足するため、通常は、理想空燃比より濃い状態でキャブレターのメインジェットを選定します。また、吸入する空気の温度と湿度によって、適正な空燃比(空気と燃料の比率)が変化します。
 EC04エンジンの場合では、62.5番から67.5番の間が最もバランスが良いようですが、濃すぎるとトップエンドのパワーが不足して最高回転数が上がらなくなり、薄すぎると、中高速でのトルクが不足してこれも、加速が鈍ったり最高回転数が上がらなくなったりします。セッティングの方法としては、一番よいのは、まず65番のメインジェットを装着してデータロガーのデータをパソコンに取り込み解析します。そして、62.5番と67.5番に変えてみて、その時の気温、湿度も含めて記録してデータをとり、そのエンジンにうまく合うところを探しておきます。これは、エンジンの個体差やジェットニードルの位置調整、エンジンオイルの種類と混合比によっても変わってきますので、最高回転数と気温、湿度だけでもいいので、地道に練習でデータを取るしか方法はありません。パソコン解析しない場合の中速域のトルクは、ドライバーさんの感覚で判断してください。
 また、この中速域から高速域にかけての回転上昇とトルクの出方は、10000rpmぐらいでトルクカーブのピークを迎えるため、そこから上は、ゆっくりとしか回転は上昇しません。ですので、最高回転数ばかりに着目していると、かえってタイムが伸びない場合があります。琵琶湖スポーツランドのストレートを例にとりますと、最終コーナーを抜けてからホームストレートの真ん中くらいで10000rpmを超え、高速で全開で抜ける1コーナーでコーナリング抵抗のために一度回転が落ち、2コーナーの20mから.30m手前あたりでやっと12000rpmを超えて最高回転数に達します。つまり10000rpm前後のパワーの出方が重要で、最終コーナーと1コーナーをいかに抵抗を少なくうまくコーナリングするかでもストレートでの差がつきます。よくピットの前のホームストレートで抜かれると、エンジンの最高回転数のせいだと思ってしまいますが、実は、最終コーナーから立ち上がりのコーナリング方法と、最高回転数を追いすぎたキャブレターセッティングのせいであることが多いのです。


5-2.ジェットニードル位置の調整

 ジェットニードルとは、キャブレターのスライドピストンの先についている、テーパー状に先が細くなっている直径1mm程度の針のような部分です。スライドピストンの裏側から取り外すことができて、5段階の溝が切ってあり、クリップでとめて高さを調節できるようになっています。先端は、メインジェットにつながる穴に入っていて、ここで燃料を霧吹きの原理で霧化して混合気を作る働きがあります。
 ジェットニードルの高さを変えると、同じアクセル開度でも、フロート室からメインジェットを通して供給される燃料の量が変化し、混合気の空燃比が変化します。ジェットニードルを低くすると穴が小さくなって、空燃比が薄くなり、高くすると空燃比が濃くなります。影響するのは、主に中低速域ですが、全開時でも多少、同様の効果があります。メインジェットで空燃比を設定したあと、アクセルのツキの状態を調整することと、全開時の微調整のためにクリップ位置の変更を行います。新品では、クリップ位置が真ん中にセットされており、大体、この位置のままで大丈夫ですが、シビアにキャブセットを調整する場合は、ここを変更すると変わります。また、レギュレーションによっては、琵琶湖スポーツランドのキッズクラスのように、この部分を真ん中固定、とされているところもありますのでご注意ください。


5-3.アイドリング調整

 EC04のキャブレターは、市販のバイク用のキャブレターなどについているスロー系のジェットがなく、メインジェットだけで調整します。このため、アイドリングの調整は、アクセル全閉時のキャブレターのスライドピストンの開口部の高さで行います。キャブレターのサイド部分にアイドルスクリューのネジがついており、これを回して絞めるとスライドピストン側面の斜めになった部分にあたり、スライドピストンの開口部が変化するという、いたってシンプルなものです。このため、アイドリングの安定があまり良くないので、アイドリング回転数の設定は、多少高めにしておいたほうが良いと思います。特にエンジンが冷えている時はアイドリンク回転数が高く、温まると下がってきます。アイドリング調整は、エンジンをしばらく回して、温めた状態で行ってください。

5-4.フロート室の油面調整

 キャブレターのフロート室の燃料の量は、黒いプラスチック製のフロートが燃料の中で浮き、それと接触している真鍮製の金色をしたフロートアームが、燃料がメインジェットから吸い上げられて減った分、ピンを下げて燃料を補給するという構造になっています。この機能で、燃料の上面は、常に一定の高さで安定して、メインジェットが完全に燃料に浸かり、メインジェットの穴径に合わせた燃料が吸い上げられるという仕組みになっています。本来はノーマルから変更することはありませんが、気がつかないうちにフロートアームを曲げてしまうと、この油面が変化してしまい、油面が高くなると、燃料のオーバーフローといって燃料がキャブレターの外部に漏れてしまい、低くなると、コーナーで遠心力がかかったり、エンジンの振動によって、油面が傾いたり、波打ったりして、燃料以外に空気も吸い込んでしまったりして、不具合が起こります。
 EC04のキャブレターは大変小型のため、この油面の適性範囲が非常に狭く、ちょっとしたことで、オーバーフローや空気の吸い込みを起こしてしまいます。
 油面の調整方法は、フロートアームの中央部分を手で曲げて上下各1mm以内で調整します。オーバーフローは結構起こりやすいので、レギュレーションが許せば、メインジェットの取り付け部分に1mm程度の径の細いワッシャーをかまして、フロートアームで油面を初期値から1mm下げると効果があります。
 また、初期値設定で、油面を下げたほうがよく回るという誤った風評がありますが、これはたぶん前述のオーバーフロー対策の手法が誤った情報として流布したものだと思われます。原理的に、油面が低くて、メインジェットから多少でも空気を吸い込むことは決してよくはありませんし、最悪、加速やコーナリングの際にエンジン息つきを起こしてしまいます。


5-5.キャブレターのスライドピストン位置の調整

 スライドピストンは、アクセルワイヤーを止まるところまでいっぱいに引っ張ると、キャブレターの吸気通路よりいくらか上になります。こうなると、キャブレターの吸気通路の形状が滑らかでなくなるため、流入空気流が乱れて良くないとされています。確かに、最高回転数が200rpmほど変わる場合があります。また、同時に、それだけジェットニードルも高い位置で全開となるので、その場合の吸い上げられる燃料の量も濃い方向に変化しています。ベストは、エアクリーナーを外して、目視で、スライドピストンが吸気通路と面一または、若干見えるあたりでアクセルペダルのストッパーにあたるようにします。また、目視でなくても、アクセルワイヤーをいっぱいに引っ張り、そこから、1mmから2mmの遊びをもたせてアクセルペダルのストッパーで調整してもかまいません。

 


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