Skip to Content

親子で楽しむ、リーズナブルなモータースポーツ、ケイズガレージのキッズカート

独自のリース・システムやスクールで気軽にレーシングカートを始められます

   2.クランクケースリードバルブ方式の2ストローク小排気量エンジンの仕組みと性能向上方法

-CONTENTS-

サイトトップページ

技術解説トップ

1.目的と原則について

2.2ストローク小排気量エンジンの仕組み

3.レギュレーションに則ったEC04のエイジング加工による性能向上について

4.EC04エンジンのリードバルブと混合気の吹き返しよる限界について

5.EC04のキャブレター・セッティングについて

6.EC04系エンジンのCDIと点火の調整について

7.EC04系エンジンのこれまでの形式と部品、構造の違い

8.オイル添加剤等とエンジンオイルについて

 キッズカートに使われているEC04エンジンは、クランクケースリードバルブ方式の2ストローク単気筒エンジンです。この形式は、少し以前までは50ccスクーターなどによく使われていた形式で、カートでも、KT100の上位カテゴリーのエンジンにも使われています。しかし、近年、排ガスのクリーン化に不向きな2ストロークエンジンが市販車、2輪レースから姿を消してしまい。今では、過去の技術として、カート関係以外の書籍などではほとんど解説されなくなりました。一般の4ストロークエンジンとは仕組みが大きく違うため、それを理解するためには、古書や古雑誌、カート関係書籍を読まなくてはなりません。ネットでは、検索をすればいくらかの情報は見ることができます。
 EC04エンジンのメンテナンスと性能向上方法、レギュレーションの規制の用語や理由などのために、ここでは2ストロークエンジンの簡単に解説しておきます。詳しくは、図版の豊富な解説書を一度読んでおくことをお勧めします。とはいえ、仕組みが分からなくてもカートショップのサポートがあれば高度な専門知識が無くても大丈夫です。ただし、キッズカートを卒業してカデットやその上のクラスにステップアップすれば、2ストロークエンジンの基礎知識は必要になります。メカニックの親御さんだけでなく、ドライバーさんにも知識が必要になり、カートの仕組みを含めて、小学校の高学年からの理科や算数の勉強の応用にもなりますので、できるだけ、理解していただきたいと思います。


2-1.クランクケースリードバルブ方式の2ストロークエンジンの基本動作

 まず、ピストンが一番高いところ(上死点といいます)にあるところから、エンジンの回転によりピストンが下がり始めるところから始めます。この時、ピストン上面とシリンダー内面との間で混合気の爆発が起こっていて、その圧力でピストンが押し下げられます。この間、ピストンの上面がシリンダーの横に空いている排気ポートと掃気ポートの上面に達するまでは、爆発圧力がエンジンを回すために使われます。同時に、密閉されているクランクケース内の容積がピストンの下降により減り、クランクケース内にある混合気の圧力が高まります。

 次に、ピストンの上端が排気ポートの上端より下まで動くと、爆発して膨張している排気ガスが排気ポートからマフラーへと排出され始めます。ほぼ同時にクランクケース室とつながっている掃気ポートの上面も開き始め、クランクケース内で圧縮されていた混合気がシリンダー内に噴出します。ピストンが一番下(下死点といいます)まで下がり、続いてピストンが上昇し始めて、排気ポートと掃気ポートが閉じるまでの間に、シリンダーの燃焼した排気ガスの排出と未燃焼の混合気の流入が続きます。ピストンが排気ポートと掃気ポートの上に来たところから混合気の圧縮が始まります。この間にはシリンダー内で、燃焼済の排気と未燃焼の混合気が入り混じることになるわけですが、掃気ポートと排気ポートの位置や形状の工夫で、できるだけ燃焼済の排気はすべて排出して、未燃焼の混合気だけをたくさん詰め込むように設計されています。
 とはいえ、掃気ポートのほうが面積が広いことなどから、ある程度の未燃焼の混合気も排気ポートから排出されてしまいます。このためマフラー部分にチャンパー機能という構造を設けることで、あるエンジン回転数を中心に排出された未燃焼の混合気をシリンダー内に逆流させて、混合気の充填効率を上げるという方法がとられています。この回転数は、排気ポートからマフラー内の先端が細くなった部分までの距離で決まり、この長さで高速な圧力波の反射により、排気ポートに排気ガスを押し戻す現象が起こります。キッズカートではマフラーは指定純正品のみの使用で、マフラーと排気ポートの間に何も挿入してはいけませんので、このチャンバー効果の調整はできませんが、KT100エンジンの使用クラスでは、ここの長さを変えるパーツの使用が許されており、一番トルクのほしいエンジン回転数に合わせて調整します。
 余談ですが、琵琶湖スポーツランドのコースでは、この調整パーツ、エキゾーストジョイントまたはジャバラといいますが、カデットの場合でこれを110mm、SSの場合は45mm前後で調整します。これが10mm違うだけでもトルクや最高回転数に違いが出てきます。キッズカートの場合は、実際の測定は行っていませんが、マフラーの形状と大きさから、このチャンバー効果が出るのはかなり高回転、たぶん20000rpm以上になっていると考えられます。アミゴン登場以前には、レオンK40用に長いチャンバーマフラーがオプションで販売されていて、クラス分けがありました。

 この掃気と排気が終了するところまでピストンが上がり、掃気ポートと排気ポートがピストン側面で閉じられると、ビストンの上死点までの間に、混合気が圧縮され、同時にクランクケース室の容積が増えることによって、クランクケース内の圧力が大気圧より低くなり、クランクケースについているリードバルブが開いて、混合気をキャブレターから吸い込みます。最後にピストンが上死点まで達すると、シリンダー内の混合気が爆発、膨張を始めてピストンを押し下げるとともに、クランクケース室の容積も少なくなり始めて圧力があがり、リードバルブが閉じて、混合気の吸気が完了します。
以上の工程を繰り返して、2ストロークエンジンは回っている訳です。


2-2.一般的な2ストロークエンジンの性能向上手法とEC04の禁止事項の説明

 ここでは、過去のレーシング2ストロークエンジンの改良や2ストスクーターの改造などで行われていた、2ストロークエンジンのチューンナップ手法を解説しますが、キッズカートのレギュレーションで一切の切削加工と純正部品以外の使用が禁止されていますので、基本的にはすべて違法改造となって失格になります。むしろレギュレーションに則って、やってはいけないことの説明だとお考えください。また、キャブレターのセッティングについては一般論を書くと長くなりすぎるため、EC04付属のキャブレターについてのみ別項で解説いたします。


2-2-1.掃気ポートと排気ポートの形状変更

 前述のように、掃気ポートと排気ポートの上部がシリンダーのどの位置に開いているかで、掃気と排気のタイミングが決定されます。これは4ストロークエンジンのバルブとカムの部分の機能にあてはまり、これが低回転の場合と高回転の場合で、要求される開閉タイミングが違うことになってくる訳です。過去市販されていた2輪用2ストロークエンジンなどでは、ここをエンジン回転数によって可変させる機構なども存在していました。
 高回転化を重視する場合は、この位置を少しだけより高く加工します。あわせて、掃気ポート上面より、若干高く設定されている排気ポートの位置をより高くします。このことで、より高回転で出力が出るようになります。
 また、掃気ポートと排気ポートのシリンダーに開いている面積を広くとることで、より、掃気と排気を効率的に行われ、出力を向上させることができます。その他、掃気ポート、排気ポート上面のシリンダー内に対する角度を緩やかにして、掃気、排気の空気の流れをスムーズにします。EC04エンジンの場合、この部分がかなり低回転よりに設定されていますので、ちょっとした加工で性能が激変します。このため、レギュレーションでは、ポート部分の切削加工は一切禁止されています。また、これらの部分は、製造時の鋳造によるザラザラした表面がのこっていますので、もしもこの部分を切削加工した場合には、目視で一目瞭然に判別することができます。また、排気ポートにはカーボンが蓄積して黒くなってますが、カーボン除去剤でカーボンを除去して表面を見ると加工の有無がわかります。特に、メンテナンスの際には、排気ポートのカーボンをとるためにヤスリなどを使うと、意図せずポート表面を削ってしまって、車検で失格になりますので注意してください。


2-2-2.圧縮比のアップ

 圧縮比というのは、排気ポートが閉まってから、ピストンが上死点に行くまでの間にどれだけの比率で混合気が圧縮されるかという比率です。これがある程度大きいほど出力が向上します。一般的なチューニングでは、上死点まで上がったピストンの上部とその場合のシリンダー内のいわゆる燃焼室容積を小さくすることで行います。方法としては、シリンダーヘッドを研磨して燃焼室容積を下げる方法とピストンの上部形状を膨らませて行う方法があります。これらは、もちろん純正部品のみの使用と切削加工を禁止している通常のレギュレーシヨンに違反します。
 また、過去の事例から、純正オプション以外の電極部分の突起したプラグを使用することでほんの少しですが、燃焼室容積を下げようとしたり、シリンダヘッドやピストンに溜まったカーボンを除去せずにできるだけ蓄積させて燃焼室容積を下げたほうがよい、などという風評がありましたが、ほとんど、変わりはありません。それよりも、カーボンのつき方によっては高回転で異常着火(デトネーション)や焼き付きを起こす可能性があるので、カーボンはできるだけ除去したほうがいいでしょう。この場合も燃焼室内面やピストン頂部を削ってしまうと切削加工を認めてしまいレギュレーションに抵触しますので注意が必要です。


2-2-3.圧縮性能の向上

 どんなエンジンでも、ピストンが上下運動できるようにするために、ピストンの外径は必ずシリンダー内径より小さく作られています。しかし、そのままですと燃焼室で爆発した混合気の圧力で、ピストンとシリンダーの隙間から圧力が逃げて、パワーロスが起こります。そのために、バネの働きのあるピストンリングをピストン上部側面に取り付けてこの隙間を密閉するようになっています。
 ところが、いくらピストンリングでシリンダー内面と圧着されても、ピストンを動かすためには、ある程度の隙間が必要です。このことから、ピストンの外径とシリンダー内径の隙間(ピストンクリアランスと言います)を小さくすることが、エンジン出力上昇につながるので、ピストンクリアランスを適正に設定する、というのがチューニングの手法にあります。
 また、シリンダー内面とピストンリングはエンジンオイルの被膜を介しているとは言っても常に擦りあわされているので、使用するに従って、その両方が摩滅してゆきます。そうなると、シリンダー内面が削られて、このピストンクリアランスも徐々に大きくなってきます。この結果、トルクの減少が発生します。
 カデットのKT100エンジンでは、この摩滅が進みピストンリングが大きくなっていた場合、定期的なオーバーホールの際、計測して、シリンダー内面を削り(この場合はボーリングといいます)シリンダー内面をより真円度を高くして、純正交換部品として供給されているオーバーサイズピストンに変更します。

 EC04エンジンの場合には、こういったオーバーサイズのオプションピストンは存在しないため、シリンダー交換以外、対処の方法はないのですが、実は、EC04の場合、低出力でフリクションロスがエンジンの最高回転数に大きく影響するために、ピストンクリアランスが標準規格よのも大きいほうがよい、ということが分かっています。このことは、ピストンクリアランスは小さいほうがよい、というセオリーに反しますが、実際には、レーシングエンジンとしては大きめの、0.08mm程度のピストンクリアランスがあるほうが良い結果がでます。ただし、ここはトルクロスとフリクションロスとのどちらをとるかということであって、これがベスト、という数値はありません。また、EC04はピストンとシリンダーの工作精度がKT100エンジンほど厳密ではないので、新品でも、ピストンクリアランスが異なっています。大体0.05mmからプラスマイナス0.02mmといったところです。
 これも誤った風評ですが、新品ピストンを大量に購入して、手持ちとシリンダーと一番ピストンクリアランスが小さいものを選ぶとよい、というのも上記の理由から間違っています。

 このピストンクリアランスの調整のための研磨、つまり、シリンダー内面のピストンリングとピストンのあたる部分のホーニングは切削加工ではありますが、エンジンを普通に使用するだけで摩滅の進む部分なので、レギュレーションには抵触しないと考えることができます。また、切削加工したとしてもその痕跡を判断する方法がありません。また、ホーニングをせずにそのままエンジンを使い続けると、最初にホーニング加工されていた細いキズ(ホーニング溝といいます)がすり減って無くなってしまう鏡面化現象という状態になり、シリンダー内面のオイル保持能力が低下してエンジンの焼き付きにつながります。そのためにも、ホーニングは必要です。やり方自体はそれほどむずかしいものではなく、計測器具とホーニングツールがあれば、カートショップではもちろん、個人でも作業は可能です。

 また、この圧縮圧力の保持とフリクションロス低減について、バネであるピストンリングが熱と摩擦によって結構ヘタりますので、こまめな交換が効果があります。


2-2-4.点火系の強化と点火時期の調整

 これも一般的なセオリーですが、点火火花を強力にすることと、高回転むけに点火時期を早くするというものがあります。
 EC04の場合の点火火花を強力にする方法として、CDIからの供給電力を増加させるために、CDIとフライホイールのクリアランスを小さくすること、プラグコードとプラグキャップを通電抵抗の少ないものに変更すること、プラグを純正オプションで電極に切れ込みが入っていて熱価の高いBPM8Yに、またはレギュレーションが許せば、イリジウムなどの着火性能のよいものに変更する方法があげられます。また、厳密には、過去複数、純正品として供給されたCDIの中から巻線数の多そうなもの、つまり大型のものを選ぶほうがよいのですが、実際問題として、ほとんど違いはありません。
 フライホイールとCDIの隙間調整の方法は、フライホイールのマグネット部分にシックネスゲージか、無い場合は、年賀ハガキなどの官製ハガキをフライホイールの厚みに切ったものを、CDIとの間挟んで、取り付けボルトを絞め、そのあとシックネスゲージを抜く、というやり方でかんたんにできます。官製ハガキの厚みがちょうど0.2mm程度です。

 次に点火時期の調整ですが、回転がごく低い場合、プラグの点火のタイミングはピストンが上死点に達した時なのですが、エンジン回転数が上がってくると、プラグの火花で混合気が燃焼をはじめても、すべての混合気が燃える前に、ピストンが上死点をすぎて下がってしまうため、最大の出力が引き出せません。このため、プラグの点火タイミングをピストンが上死点にくる前にして、上死点の時点で混合気がすべて燃焼を始めているように調整します。これを点火時期の進角といいます。着火によるに火炎伝播速度は一定であるため、最適の進角はエンジンの回転数で変化します。これを高回転より、つまり早いタイミングでプラグに点火するように変更する訳です。この機構は、市販エンジンなどでは、自動で最適に可変するように電子制御されていますし、KT100エンジンでは、調整機構がついています。
 EC04エンジンでは、構造的に、この点火タイミングはフライホイールのキーで固定されていいて変更することはできませんが、その設定がかなり低回転よりになっているため、違法改造のひとつとして、フライホイール側のクランクシャフトについているキーを外して、フライホイールのマグネット部分がより早いタイミングでCDIの部分にくるようにしてボルトで固定しなおす、というものがあります。また、CDIのクランクケースへの取り付けボルト穴を削って広げて、CDIの取り付け位置を少しでも早いタイミングにするというものがあります。どちらにしても、EC04の進角調整はすべてレギュレーション違反であり、分解車検ですべて目視確認ができますので行わないでください。

 もし、レギュレーションが許せば、この点の唯一の改善方法としては、プラグの変更とプラグギャップを広げることがあります。CDIの種類の違いは、BPM8Yをプラグギャップ0.8mmから1.2mm程度に広げることで解消されることが検証でわかっています。
 また、レギュレーションによっては、プラグギャップに規定があって、広げられない場合もありますのでご注意ください。出荷時のBPM7Aのプラグギャップは0.6mmで誤差0.05mm程度ですが、落としたりした場合、プラグギャップが変わってしまうこともありますのでご注意ください。プラグギャップに規定がある場合は、車検長の所持するシックネスゲージの0.8mmが通れば失格となります。


2-2-5.フリクションロスの低減

 エンジンは、金属がオイルを介して接触する部分があり、その摩擦抵抗にパワーが食われてしまいます。これをフリクションロスといいます。フリクションロスは完全になくすことは不可能ですが、エンジンオイルの選定やガソリンとの混合比の変更、オイル添加剤の塗布によって摩擦抵抗を減らしたり、接触する金属部分、EC04エンジンの場合は、クランクシャフトベアリングとピストンリングとシリンダー内面、クランクシャフトとオイルシール内面になりますが、長期間使い続けたり、場合によっては、この部分を削り、クリアランスを適正にしてやることで、新品状態よりかなり大幅にフリクションロスが低減できます。フリクションロス低減によりエンジンパワーの減少を防ぎ、より高回転までエンジンを回すことができるようになります。
 このことが、EC04エンジンは育てるエンジンであるとか、アタリ、ハズレがある、と言われる要因でもある訳です。

 EC04エンジンもそうですが、このフリクションロス低減と寿命をのばすのために、シリンダー内面を特殊なメッキ加工がほどこされている場合もあります。
 また、このフリクションロスは、エンジン内部だけでなく、駆動系すべてについて影響しますので、クラッチベアリング、チェーンと前後のスプロケット、リアシャフトベアリングについてもフリクションロス低減処理を行う必要があります。
 各部のベアリング類には、高負荷での長寿命と摩滅防止の目的で、かなり高粘度の半固形グリスが塗布されています。キッズカートの場合は、このグリスをパーツクリーナーですべて洗い流して、チェーンオイルまたは、良質で低粘度のスプレー式シリコングリスを塗布し、PL220Sのような添加剤を吹き付けてフリクションロスを低減させておきます。
 また、弊店で使用している、自転車や小排気量バイクに定評のあるEPL社製のPL220Sスプレーや著名で歴史のあるマイクロロン、スーパーゾイルなどのオイル添加剤の使用もフリクションロス低減に効果が高いです。


2-2-6.自動遠心クラッチの接続回転数の変更

 EC04やKT100SECなどに使われている自動遠心クラッチの動作原理は、クランクシャフトの回転上昇に伴って、スプリングで縮められていたクラッチシューが遠心力でスプリングの力に勝って広がり、ドラムクラッチの内面に接触して動力を伝える、というものです。この仕組みで、アイドリングではクラッチが切れて、エンジン回転上昇とともに、クラッチシューが滑りながらクラッチドラム内面に接触して、いわゆる半クラッチ状態を経て、完全にクラッチがつながって動力がロスなく伝達される訳です。
 この自動遠心クラッチの一般的なレーシングチューンの手法として、スプリングをより強力なものに変えて、完全にクラッチのつながるエンジン回転数を最もトルクの出る高回転側に移動させ、スタートや低速コーナーの立ち上がり加速の向上を狙う、という手法があります。また、クラッチシューを軽量のものに変更して、遠心力を低下させて同様の効果を求める方法もあります。
 EC04エンジンでは、過去3枚羽根クラッチの時代に、純正オプション品として軽量クラッチシューや強化スプリングが供給されていたこともありましたが、現在、それらの使用はレギュレーションで禁止されていますので、この部分での調整は一切できません。

 また、EC04やKT100SECなどの乾式といわれる方式以外に、クラッチシューの表面を滑らかな鉄製のものにしてクラッチドラムを密閉し、その中にオイルを適量注入して摩擦を調整する湿式クラッチという方式もあります。これは、KT100SEC以前にあったヤマハのKT100SCやKT100Jといったエンジンに長く使われていました。湿式クラッチの場合は、半クラッチと完全接続するエンジン回転数の調整には、注入するオイルの量と質の調整とクラッチシューの重さの変更による方法がとられてきました。
 この時の知識を転用して、EC04エンジンの乾式クラッチのクラッチシュー表面とクラッチドラム内面に、グリス類やオイル類を塗布して、半クラッチと完全接続するエンジン回転数の調整するという方法が使われたことがありますが、本来の性能が出せないこともあり、現在、レギュレーションでクラッチ部分へのオイル類の塗布は一切禁止されています。これも、クラッチを外せばすぐわかります。また、クラッチ内部は、汚れやすいので、常にパーツクリーナーで油分とダストを除去するように心がけてください。


2-2-7.マフラー変更によるチャンバー効果の増強と設定回転数の変更

 2ストロークエンジンのマフラーは、出力増強のために一般に滑らかな膨張室形状をもったチャンバーと言われる形をしています。チャンバー効果というのは、排気を強力に吸い出すことと、先がすぼまった部分で排気の圧力波の反射を利用して排気されようとする未燃焼の混合気を燃焼室に押し戻して、充填効率を高めてより多くの混合気を燃焼させようという構造です。詳しくは、書籍やネットで「チャンバー効果」でお調べください。
 このチャンバー効果は、排気ポートからチャンバーのすぼまっている部分までの距離によって、ある特定のエンジン回転数だけを中心に働き、それ以外のエンジン回転数では効果がありません。実際にカートやバイクでは、排気圧力の反射による充填効率の向上とそれによるトルク増大は、排気ポートからチャンバーのすぼまっている部分までの距離を調整して行います。KT100エンジンでは、エキゾーストジョイントと言われる、各種の長さの異なったものが用意されている金属の筒を、マフラーと排気マニフォールドの間に挟んで調節します。

 EC04の場合は、現行の角形マフラーもそのような構造に近い形状にはなってはいますが、大きさの関係で大したチャンバー効果はなく、あったとしても20000rpm以上での作動回転数になるはずであり、マフラーも純正品しか使えないので、一般的な2ストロークエンジンのチューニングの定番であるチャンバー装着としう手法は使えません。
 ちなみにアミゴン登場以前は、レオンからEC04用チャンバーというものが販売されていましたが、長さが50cm以上あり、パワーもノーマルより確実に向上していました。現行のレギュレーションでは、このチャンバーや昔の円筒形などの、現行の純正角形マフラー以外の装着は禁止されています。また、同様の理由から、マフラーの排気口にハイプ類を取り付けることも禁止です。
 

2-2-8.リードバルブの形状変更と強化

 クランクケースリードバルブ形式の2ストロークエンジンのチューニングのひとつとして、強化リードバルブの装着という手法があります。これは、板バネとして吸気を弁として制御しているクランクケースリードバルブを、より強いバネ定数を持たせるために、厚みを増したり、樹脂製やカーボン製のものに交換するというものです。そうすることで、低回転の時の吸気抵抗は増大しますが、より高回転域でバルブが効果的に働き、混合気の吹き返しを減らして高回転でパワーを出すことが可能になります。
 また、クランクケースリードバルブの開きを制限しているストッパー部分を変更して、より適切にリードバルブの開度を広げて、吸入する混合気を増やすこともパワーアップ化に効果があります。

 EC04では、最高回転数の上限が、純正品の板バネとしてはかなり柔らかいリードバルブで、大体決まってしまうところがあります。また、リードバルブアッセンブリも純正品を一切加工せずに使用しないといけませんので、この強化リードバルブという手法は使えません。詳しくは後述いたします。

2-3.レギュレーションで違反となる事例と車検での確認方法

1.排気ポート、掃気ポート部分の研磨

 シリンダーを開けて目視確認します。必要があれば、排気ポートについては、カーボン除去剤によりカーボンを除去して切削加工の痕跡がないか確認します。

2.その他、レギュレーションで許容されている部分以外のすべての切削加工

 エンジンをすべて分解し、目視または計測確認を行います。これは必要に応じて、車検長の判断でどこまで分解するかは決定されます。

3.CDIのフライホイールの取り付け用のボルト穴の切削加工による点火時期の変更

 CDIを取り外し、目視または計測確認を行います。

4.フライホイール側のクランクシャフトのキーの取り外しによる点火時期の変更

 フライホイール側のボルトを外して目視確認します。または、フライホイールを取り外して確認します。点火時期が変更されていなくてもキーがついていなければ失格になります。

5.使用を禁止されている純正部品の使用、および純正部品以外の部品の使用

 確認対象によって必要なエンジンの分解を行い、目視または計測確認を行います。これは必要に応じて、車検長の判断でどこまで分解するかは決定されます。使用が禁止されている純正部品の例としては、「3」の刻印のあるシリンダーや角形以外のマフラー、金色をしたリードバルブなど、各レースのレギュレーションに指定されているものです。

6.リードバルブアッセンブリの部品の純正品以外の使用とすべての切削加工

 リードバルブアッセンブリを取り外して目視またはリードバルブの厚みを計測して確認します。

7.クラッチ部分へのグリス類、オイル類、添加剤等の塗布

 クラッチドラムを外して目視、手での触接で確認します。

8.キャブレターの使用部品と調整が指定されている場合は、メインジェットの変更、ジェットニードル位置の変更、一切の切削加工。

 キャブレターを分解し、目視または計測確認を行います。

9.点火プラグとプラグギャップがレギュレーションで規定されている場合、指定以外のプラグの使用とプラグギャップの変更。

 点火プラグを外して、プラグギャップがレギュレーションで規定されている範囲内かどうかを計測確認します。

10.プラグキャップの純正部品以外への変更

 目視確認を行います。

 


  ケイズガレージトップ
Copyright(c)1999- K's Garage, All Rights Reserved.